皆様こんにちは。
本日ご紹介するタイ労働判例は
IPO(上場)・組織再編による役員・幹部社員の解雇と解雇補償金
をお送り致します。
(文字数:2,384文字)
タイ語の労働裁判の判例を日本語に翻訳し、かつ日本語での解説を入れています。
概要
「IPO(株式上場)の準備に伴い経営陣を入れ替えたい」
「組織再編のため役員や幹部社員に退任してもらいたい」と考える企業は少なくありません。
本件では、タイ証券取引所への上場準備を進めていた会社が、
経営陣の適格性を見直した結果、最高経営責任者(CEO)でもあった従業員を解雇しました。
会社は解雇後に不正行為が判明したとして解雇補償金の支払いを拒否しましたが、
労働者は会社都合による解雇であるとして補償金を請求しました。
本判例は、「IPOや組織再編を理由とする解雇では、
解雇補償金の支払い義務を免れることができるのか」という、
在タイ日系企業にも非常に参考となる判断を示した事例です。
判旨
原告:労働者A(最高経営責任者兼取締役)
被告:会社X
【労働者保護法第118条】
労働者を解雇した場合、使用者は勤続年数に応じた解雇補償金を支払わなければならない。
【労働者保護法第119条】
労働者が重大な不正行為や故意に会社へ損害を与えた場合などは、
解雇補償金を支払わずに解雇することができる。
【労働裁判所設置および労働訴訟法 第56条第2項】
労働専門事件控訴裁判所は、第一審が認定した事実を前提として審理・判断しなければならない。
労働者Aは、会社Xで約6年間勤務し、最高経営責任者(CEO)兼取締役を務めていた。
会社Xは、タイ証券取引所への上場(IPO)に向けて経営体制を見直した結果、
証券取引法上の適格性を満たさないとして労働者Aを解雇した。
これに対し労働者Aは、解雇はIPO準備に伴う会社都合によるものであり、
自身に労働保護法第119条に定める重大な非違行為はないとして、解雇補償金などの支払いを求めて提訴した。
一方、会社Xは、解雇後の調査により、労働者AがCEO在任中に、
本来会社が支払うべき解雇補償金(※注記あり)を自身および第三者の口座へ送金したほか、
複数の不正行為によって会社へ損害を与えていたことが判明したと主張した。
そして、これらは労働保護法第119条が定める重大な不正行為に当たるため、
解雇補償金を支払う義務はなく、労働者Aは会社に損害賠償を支払う義務があると主張した。
これに対し労働者Aは、解雇補償金(※注記あり)の送金は事務上の誤りであり、
不正の意思はなく、その後返還も済ませていると反論した。
また、小切手の振出しや契約の締結はいずれも会社の代表者として行ったものであり、
個人的な利益を得た事実も会社に損害を与えた事実もないと主張した。

